怪作・FEZであなたも倒れよう

最近xblaでリリースされたFEZというゲームの出来がヤバい．未体験の方は是非体験版だけでも手にとって見て．

「キューブを集めないと世界が滅ぶの」
何の脈絡もなく突然こんな感じで大きな使命を背負わされた少年ゴメス．2次元フィールドと3次元フィールドを切り替えて隠されたキューブを集めよう…というのがこのゲームの導入．これだけだと単なるアクションゲームに聞こえてしまうかしれないけれど，実はそんな生やさしいものではなかった．


このゲームは3dで組まれているのに，奥行き感が0というなんとも不思議な作りをしていて，このことがゲーム性に上手く取り込まれています．プレイヤーはいつでも視点を90度ずつ回転させることが出来，隠されたルートやアイテムを探すこととなります．このとき，フィールドは奥行き感が皆無であることから見た目が完全に2d状態なのですが，主人公はこの2dのフィールドを見た目のとおりに自由に動きまわることができます．例えば実際には遠く離れている小島同士も，見た目が繋がっていればその上を渡ることが出来るといった寸法です．かいつまんで言うとスーパーペーパーマリオの次元技の逆といった感じでしょうかね？

この見た目を回転させて新たなルートを作り出すと言った部分がとても斬新で，非常にパズルチックなゲーム感を演出しています．あんな所本当に登れるんかいなといった場面において，あれこれ試行錯誤しているうちに，一時の閃きでスルリと解法が見つかる快感は，まるで知恵の輪が外れる瞬間といった趣があります．様々なギミックについても，この視点操作を前提とした効果的なものばかりでプレイヤーを飽きさせません．

とここまで来ると，要はパズルアクションゲームなんだろと思うでしょう？ですが，実はそんなジャンルで一括りにできるような単純なものじゃないんです．何も準備せずただ漫然とキューブを集めているだけではクリアすらおぼつきません．なぜならフィールドに散りばめられた謎を解かなければならないからです！この謎というのが実はこのゲームの肝なんですね．意味深に貼られたポスターがあらぬところのヒントとなっていたり，あそこのスイッチを入れることでこの扉に入れるようになったり…といった程度ならまだマシで，本当のひらめきを要する場面のなんと多いことか！もうスタッフの意地の悪さにはほとほと感動します．なんというか，一昔前のアドベンチャーゲームをプレイしているような感覚におちいること請け合いです．（ここまで酷い謎解きは未だかつて出会ったことがないよ．）

そうは言っても広大なステージの繋がりをわかりやすくするためマップが提供されていたり，アイテムの取りこぼしの場所はアイコンが表示されていたり，ワープゾーンは完備されているし，ゲーム本編以外でのストレス源は殆ど無いと言っていいでしょう．全力で謎解きに頭を悩ませることができます．

ここまで読んで面白そうだなと感じたあなたは是非買って下さい．この出来で800MSPというのは破格のお値段です．それでも躊躇しているのなら，もう少しお付き合い下さい．

操作性としては2dのアクションゲームを踏襲しているため，キャラクターは温かみのあるドット絵で作られていて，これらが滑らかにアニメーションする様は見ているだけでも心が和むのですが，どうにもどこかで見たような印象なんですね．それでクレジット画面を確認したら納得．その筋で有名なポール・ロバートソンが担当していたんですね．彼は「scott pilgrim vs. the world the game」でも魅力的なドットアニメーションを披露していました．今回も遺憾なくその才能を発揮しています（少なめですが）．

その他，演出面，音楽面でもかつての8bit〜16bit時代のゲーム機を彷彿とさせる作りをとっていて，オジサンたちの目にはどこか懐かしく映ります．なんと言ってもバグの演出やフリーズに再起動，はてまたゲームボーイの液晶っぽいステージ等，作り手側のこだわりは本当に多岐に渡り，それらが渾然一体となってFEZの世界を構築しているのです．（ただ，本当の意味でのフリーズや強制終了もちょくちょく発生するので，ここらへんはもう少し何とかして欲しかった所．意図的じゃないよね？）

ここまで読んでいただけたならどれだけ満足度の高いゲームか判っていただけたかと思います．気になっているのなら， 是非買ってみて下さい．9割方損はしないはずです．その際は必ず紙と鉛筆と携帯電話を用意しておいて下さいね（意味深）．